AppleがAI(人工知能)分野の強化に本格的に取り組み始めている。
特に、音声アシスタント「Siri」の大幅な改善や、OpenAIとの提携による高度なAI技術の導入など、具体的な動きが次々と明らかになっている。
AppleはこれまでAIに関して控えめな姿勢を取ってきたが、競争が激化する中で新たな戦略を展開しつつある。
- AppleがSiriの大幅な改善を予定
- OpenAIとの提携を進めている
- 2025年に発表されると見られる「iOS 19」や次期「MacOS」でどのようなAI技術を導入するのかが注目
Siriの刷新—AppleのAI戦略の中核
AppleのAI戦略の中心にあるのが、「Siri」の抜本的な改良だ。
現在のSiriは、競合するGoogle AssistantやAmazon Alexaと比較して、自然な会話能力やコンテキスト理解の面で後れを取っていると指摘されてきた。
しかし、Appleはこの状況を打破すべく、Siriの基盤構造を大幅に見直している。
その一環として、AppleはAI部門の組織改革を実施。
長年Appleに貢献してきたキム・ヴォラス氏を、AIおよび機械学習担当の上級副社長ジョン・ジャンナンドレア氏の副官に任命した。
ヴォラス氏は、初代iPhoneのソフトウェア開発にも携わった経験を持ち、Appleのプロダクト開発文化をAIプロジェクトにも取り入れることで、より直感的で高度なAIアシスタントの実現を目指す。
また、AppleはSiriの機能を刷新するために、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)を活用する計画を進めていると報じられている。
この技術導入により、Siriはより自然な会話が可能となり、ユーザーの意図をより的確に理解できるようになると期待されている。
OpenAIとの提携—AppleのAI戦略の大きな鍵
AppleがOpenAIとの提携を進めていることも注目されるポイントだ。
Wall Street Journalによると、AppleとNVIDIAは、OpenAIへの投資を検討していると報じられている。
これにより、AppleはOpenAIの技術をSiriや他の製品群に統合し、AI活用の幅を広げる可能性がある。
特に、ChatGPTをSiriに統合する計画があるとされており、これが実現すれば、Siriの性能は飛躍的に向上すると見られている。
例えば、従来のSiriでは難しかった複雑な質問への対応や、長期間にわたる会話の文脈を保持する機能が実装される可能性がある。
AI開発の課題—Appleの慎重な姿勢
一方で、AI開発にはリスクも伴う。
最近、Appleがニュース記事の要約をAIで生成する実験を行ったところ、不正確な情報が含まれていたとして批判を受け、機能を一時停止する事態となった。
このような問題は、AIの精度向上や倫理的な配慮が求められる分野であり、Appleが慎重に進めるべき課題の一つといえる。
また、Appleはプライバシー保護に関しても他の企業より厳格な姿勢を取っており、クラウドベースではなくデバイス上で動作する「オンデバイスAI」に重点を置いている。
このアプローチは、ユーザーのデータを保護するメリットがある一方で、クラウドベースのAIに比べて処理能力やデータ活用の面で制約があるというデメリットもある。
AppleのAI戦略の今後
Appleは、これまでAIに関して控えめな姿勢を取ってきたが、今回の一連の動きから、AI市場での競争力を強化する意図が明確になってきた。
今後、2025年に発表されると見られる「iOS 19」や次期「MacOS」などにおいて、AppleがどのようなAI技術を導入するのかが注目される。
特に、Siriの大幅な進化やOpenAIとの連携が実際にどこまで進むのか、またAppleがどのような形でAI技術を製品に統合するのかが、今後のポイントとなるだろう。
AppleのAI戦略が成功すれば、ユーザーにとってこれまでにない利便性をもたらすと同時に、AI市場全体に新たな動きをもたらすことが予想される。